2015年5月25日月曜日

墨書土器データのヒートマップ作成

WEBサイト明治大学日本古代研究所からダウンロードした全国墨書・刻書土器データベース(csvファイル)をアドレスマッチングにより地図にプロットし、その情報にもとづいてカーネル密度推定(半径パラメータ20000m)によりヒートマップを作成してみました。

(ヒートマップ作成はQGISの機能を利用しました。アドレスマッチングは東京大学csvアドレスマッチングセンターの機能によりました。地図作成に係る各種調整は地図太郎PLUSの機能を利用しました。)

アドレスマッチングにより作成したプロット図は、一見もっともらしいのですが(「つくった」というレベルのプレゼンテーションならこれで十分ですが)、実はとても「不公平」なドット図です。

1遺跡から墨書土器が1点出土しても1ドットになります。一方、同じ大字に数か所の遺跡があって、それぞれから数百点の墨書土器が出土してもドットは1点です。

こうした「不正確性」(「不公平」)を除去するのにヒートマップは威力を発揮します。またヒートマップはアドレスマッチングによる位置の不正確性を除去するという効果もあります。(ブログ本編2014.09.09記事「遺跡分布ヒートマップ図の原理的有効性」参照)

1 全国対象ヒートマップの作成
墨書土器出土数の少ない北海道と沖縄を除いた全国のヒートマップを作成しました。

ヒートマップ作成に用いたドット図
画像としてのドット図は上で説明したように誤解を招くような側面をふくんでいます。
電子的なドット情報は約11万7千データあり、1ドットに千以上のデータが重なっているところもあります。

作成したヒートマップ
赤が墨書土器出土密度が最も高く、次いで白、青が最も低いことを示しています。

参考 ドット図とヒートマップのオーバーレイ図

2 本州主要部のヒートマップ図
1で作成した地図のうち本州主要部を拡大してみました。

ヒートマップ作成に用いたドット図

作成したヒートマップ

参考 ドット図とヒートマップのオーバーレイ図

これらの地図について詳しく検討することは、別の機会に行い本編ブログで記事にしたいと思っています。

ただ、関東平野の墨書土器出土高密度地域(赤のゾーン)が千葉(下総国)と群馬-埼玉-東京-神奈川の2箇所に分かれて分布していることに大いに興味が湧いたことをメモしておきます。

千葉(下総国)の赤ゾーンは名実ともに日本最大の墨書土器出土地であると考えます。

一方、群馬-埼玉-東京-神奈川に連担して拡がる赤ゾーンは関東西部山地の麓の山野辺の道沿い(東山道と東海道の連絡路沿い)であり、現代都市構造と大きく異なる古代の集落連担地構造が良く見えます。

この二つの赤ゾーンが律令国家初期の蝦夷戦争において果たした役割の違いや相互関係に興味が湧きます。

私にとって、関東平野の駅路網の意義を直感的に深めることができる情報となっています。

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