2015年6月27日土曜日

歴史文字史料としての小字と墨書土器文字の特性比較

予定調和的にそうなるように意図したのではないのですが、結果的に小字データベースと墨書土器データベースを趣味活動の材料として同時に扱うようになりました。

双方とも歴史に関わる文字史料です。小字は以前から、墨書土器は今年の春から興味を深めています。

そこで、双方とも多数の文字史料を扱うのですから、その特性の違いについて知っておくことが必要だと思い、初歩的な統計的比較をしてみました。

1 小字総数・小字名称総数・出現回数別小字名称数
6市域(千葉市、佐倉市、四街道市、八千代市、習志野市、船橋市)を例にとり、小字総数・小字名称総数・出現回数別小字名称数をグラフにしてみました。

6市域の小字総数・小字名称総数及び出現回数別小字名称数

小字総数・小字名称総数・出現回数別小字名称数の関係は、対象地域を広げてもこのグラフでみるような関係と大幅に異なることはないだろうと想定してます。

小字総数7709に対して、出現する小字名称総数は4892です。その割合は63.5%になります。

さて、ここで、関心分割率という概念を新考案し、使うことにします。
関心分割率とは、人がある母数に固有名称(文字)をつけて認識・利用している場合、次のように定義することにします。

母数が100あって、全部に固有の名称を与えたとすると、母数を100の関心で分割したことになります。この場合を関心分割率100%とします。

母数100に対して、名称の重複があり、固有名称数が50ならば、関心分割率が50%であるとします。その分野で人の関心(興味)が50あり、それに対して母数は100ですから、母数100を50の関心で分割して認識・利用している状態です。

小字の関心分割率は63.5%ということです。

2 墨書土器(釈文有)史料総数・同一釈文総数・出現回数別釈文数
千葉県墨書土器データベース(明治大学日本古代学研究所)のうち、釈文が不明なものを除き、何らかの意味を記載した史料を対象に、史料総数・同一釈文総数・出現回数別釈文数をグラフにしてみました。

千葉県の墨書土器(釈文有)史料総数・同一釈文総数及び出現回数別釈文数

墨書土器(釈文有)史料総数13639に対して、同一釈文総数は3419ですから、関心分割率は25.1%になります。

墨書土器文字の関心分割率は低く、小字と大いに異なります。

3 小字と墨書土器文字の関心分割率の違いの考察
小字と墨書土器文字の関心分割率をグラフで並べてみると次のようになります。

母数に対する関心分割(名称数・釈文数)割合

また、母数に対する1回出現データの割合をグラフにすると次のようになります。こ

母数に対する1回出現データの割合

小字は土地の自然的・歴史的特性の違いや名称を与える側の社会的特性の違いによって視点が細分化され、関心分割率が極めて高い事象であると考えます。1回出現率も約50%です。

人が生活する上で、土地の固有性理解が必須であるという生活原理があるのだと思います。

小字は社会集団の中で生まれたものですから、生れた当初に思いつきのもの、自然的・歴史的・社会的特性を的確に表現していないもの、社会が必要としないものは廃棄されたと考えます。
生まれた当初に社会的淘汰が行われ、合格点に達したものだけが残ったと考えます。一度残るとその後意味が忘れられても土地の固有性理解の必要性からずっと使われたと考えます。

一方、墨書土器文字は関心分割率が低い現象です。1回出現率も16.9%にしかすぎません。

墨書土器は個人が使った道具であると考えます。個人個人の関心(興味)毎は社会生活の中で、お互いに共通する部分が多いことは当然です。

社会にとって土地の固有性理解は必要ですが、個人個人にとって自分の関心(興味)毎の固有性(独自性)はさほど必要としません。いつの時代にも興味の流行があり、同じ関心(興味)が人々を捉えます。

同じ歴史性のある文字史料でも小字と墨書土器文字ではこのような違いがあることを認識しました。

この認識から次のような思考を続けることができます。

小字名称で多出するものは、お互いに影響力の及ばない遠隔地で、たまたま同じような状況下で生まれたと考えます。
逆に考えると、多出小字名称の背後には同じような状況が存在していたと推定できます。

ア地点の小字名称Aの背景が判れば、イ地点、ウ地点…の小字名称Aの背景が芋づる式にわかる可能性があります。
この関係は名称の一部(例○○部、○○屋敷など)についてもいえると考えます。

墨書土器文字は社会的流行に強く影響を受けて書かれたものであると考えられます。

墨書土器の文字共通性に着目すれば、社会流行の範囲を推定することができると考えます。遺跡間交流の実態が判明すると考えます。また文字内容から流行の趣旨(風潮)も推定することができると考えます。

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